失敗を繰り返し、試行錯誤しながら
自分で解決方法を探っていく
プログラミングロボット「Root」
Rootを活用するきっかけ
もともと、美里町の教育委員会が先行して6台Rootを借用しており、まずは砥用小学校で使ってみないかとのお話があり、今回の活用に至りました。また、エルモ主催の「Rootオンラインセミナー」の案内もちょうどあり、セミナーを見て「これなら活用できるかも」「この教材を使って授業をしてみよう!」と思ったこともきっかけです。
Rootの活用によって、子どもたちの試行錯誤する場面がたくさん見られました。失敗する体験がたくさんでき、自分で解決方法を探っていける教材というのがすごく良いと思います。そういう点で、Rootをお借りできて良かったなと思っています。
美里町立砥用小学校 情報担当 太田 優美 先生へ直撃インタビュー!
1時間目①「情報技術の進歩で生活がどのように便利になったか」についてGoogle Jamboardを使って意見交換する
まずは、3~4人の班に分かれて意見交換をさせました。
カードの色は、どの子が何を書いたかわかるよう、子どもごとに色分けしています。
書いたカードはカテゴリー分けさせており、例えば、左の班の場合「新幹線」「車」などは「移動手段」、「スマホ」や「冷蔵庫」は「もの」のカテゴリーに分けています。
②上記の問いに対して、保護者の声を子どもたちに紹介する
事前にGoogleフォームを使って保護者の方へ、情報技術の進歩について、家事をしている時にあったらいいなと思うこと、掃除する時にあったら嬉しい機能など、5つほどアンケートをとり、その結果を子どもたちに紹介しました。
③「これから情報技術がどのように発展にしていくか」について予想し、意見交換する
十字分布図に「あったらとても便利」⇔「あったらまぁ便利」、「すぐに実現するかも」⇔「実現までは時間がかかりそう」の4つの項目を置き、10年後・20年後の未来にはどんなものがあるかを子どもたちに予想させ、記入したカードをそれぞれの班で貼っていきました。カードの色分けは、こちらも子どもごとに別の色です。
Rootの活用を行う前の段階で、①~③の内容を子どもたちに取り組ませた意図にはどのようなものがあったか
特に、②保護者の声の紹介は、この授業における相手意識を持たせるために行いました。プログラミングは、「プログラミングすること」が目的となってはいけません。プログラミングを通して、情報活用能力の育成や、今回で言えば「総合的な学習の時間」の目標を達成することが一番大きな目的となります。そのため、最終的に「誰に」プレゼンテーションをするのか、という意識を持たせるために、最初は保護者の声を出すことが大切だと思い、このような活動を取り入れました。保護者の声を分析して、次の授業につながりを持たせる。Rootのプログラムをどのように作っていくか、ということを考えさせるという意味で実施しました。
また、③情報技術の発展の予想は、子どもたちが予想したものにもプログラミングが関わってくる、ということに気づかせるために行いました。もともと、プログラミングの技術がどのように生活に使われているのかを具体的に理解している子どもはとても少なかったです。また、プログラミング教材「Scratch」を活用したことがあったので、「Scratch=プログラミング」のイメージをもっている子どもたちが多くいました。このような背景もあり、情報技術の発展について予想させる活動を取り入れました。
④Society5.0の動画(Connect future ~5Gでつながる世界~)を視聴する
⑤単元のゴールを共有する『Rootと出会う』
1時間目の最後に「保護者・家族むけに、さらにさらに私たちのくらしを便利にする製品を提案しよう!」という単元のゴールを子どもたちへ共有しました。
また、ここで子どもたちとRootが初対面しました。初めて見るRootに子どもたちの目がキラキラと輝いていました!
2・3時間目①Rootの基本的な動きを知る
Rootの基本的な動きを知るために、こちらから全8種類のミッションを用意し、子どもたちに取り組ませました。
ミッション作成の際には、アイロボットHPのRoot紹介ページに掲載されているミッションシートを参考にしました。子どもたちはまず、1歩進む、対角線上に進む、2周するなどの簡単なミッションから取り組みました。
1班4人の場合、取り組まない子どもが出てくると思い、今回は2人組で活動させました。事前に行っていたプログラミング実態調査の結果をもとに、プログラミングが得意な子と苦手な子でペアを作ったのですが、班によって進度にばらつきが見られました。
よく進んだ班は全部のミッションをクリアしていましたが、進まなかった班は飛ばし飛ばしで取り組み、5つのミッションを進めることができていました。
②掲示板を作成し、困りごとや質問などを共有する
本来であれば、授業の中で分かったことをその場で掲示板に書き込んで共有することが望ましかったのですが、子どもたちはRootを前にプログラムを組むと困ったことがあってもお互い口頭で共有してしまいました。
今回の掲示板は、授業終わりに「今日の授業で困ったことなどを書き出していこう」という声かけで子どもたちが作りました。
カードの色ごとに「質問です」「困ってます」「こうしたらどう?」など種類が分かれており、自分たちの発信したい内容にあてはまる色のカードにそれぞれ記入しました。
「困ってます」のカードを出した子どもも、この取り組みによって無事解決していました。
4時間目保護者の声をもとにアイディアをまとめる
4時間目では、事前に保護者の方から集めた声の中でも「掃除に関する困りごと」や「こういう機能があったら嬉しいのに…」といった「掃除」に特化したものを子どもたちが分析して、掃除ロボットのアイディアを作りました。
たとえば右図の班は、機械が掃除をするとペットが怖がるので「ペットを避ける」ものが良いとか、どうしてもホコリが端に行ってしまうので「ホコリを綺麗に取る」ものが良いなど…子どもたちは、保護者の方より頂いた様々な声をもとに、目の前にあるRootでできそうなこと、これに掃除の機能がついていたら?ということを考えました。
5時間目自分たちの作った部屋を掃除するプログラムを組む
4時間目で子どもたちがそれぞれ考えたアイディアをもとに、実際にプログラムを組んでいきました。「ペットを避ける」と書いていた班は、実際にダミー人形を置き人形をペットに見立ててそれを避けるプログラムを考えようとしていました。また、「コードを避ける」と書いていた班は、Rootのカラーセンサーを使い、コードを黒い線に見立てるなど、それぞれの班でどのように自分たちのアイディアと関連させられるかを考えながら取り組んでいました。
中には、コロナが流行っているこんな世の中だから「除菌機能をつけたい」という班もありました。
除菌することをどう表現しようか?と考えた結果、ペンを下げて、ペンで線が書かれたところは除菌スプレーをした、ということで除菌されたことにしよう!など…
一部教師側から声かけした部分もありましたが、子どもたちそれぞれの発想で取り組んでいました。
6時間目スライドに自分たちの提案をまとめる
最後に班で作った掃除ロボットについてプレゼンをさせました。プログラミング活動を振り返って1点感じたことは、子どもたちがプログラミングにあまり慣れていないということもあり、自分たちが作った部屋の中を、Rootが隅々まで行きつくプログラムを考えることで精一杯だった、ということです。
例えば、5時間目で除菌機能をつけようと考えた班は、最初はスプレーをした場所をペンで書いていくという想定でしたが、最終的にはペンの描画が部屋の隅々まで通ったかどうかの判別材料になっていました。
Rootに掃除させる部屋自体は、朝自習の時など授業外の時間に作らせていましたが、時間いっぱいかかってもプログラムは完成しませんでした。
やはり、部屋の中に障害物が色々あると、組むプログラムの量が非常に多くなります。どこかで繰り返しを見つける力があれば良かったのですが、なかなかそこまでは行きつけませんでした。
Rootの強み、便利だと思ったところ
〈強みだと思った点〉
- 子どもたちがルンバを知っているので、非常にとっつきやすく身近に感じることができる
- 接続に手間がかからない
Bluetooth接続が非常にラクにできました。一度Rootに名前をつけておけば、そのあと複数台で活用してもすぐ接続したいRootが判別できるので、とてもスムーズでした。 - ペン機能をはじめ、イレーサー機能、音、光など、動く以外のバリエーションが豊富
〈活用していて便利だと思った点〉
- マグネットの機能がとても使いやすかった
ホワイトボードに貼りつけて活用できるというのは指導する上でもやりやすいと感じました。 - 実物があること
画面上のみでプログラミングできる教材もたくさんありますが、実物があると子どもの食いつきが全然違いますね。 - 「iRobot Coding」内に様々な活動の例が入っており、ワンボタンで色々なプログラムが例で出てきて動くところ
子どもたちが楽しむことができて良かったです。 - レベルが3段階あり、発達段階に応じて取り組める
- 直観的にプログラムが組める
いらなくなったブロックもパッと消せるなど、そういったことが非常に直観的にでき良かったです。
Rootを活用した感想
子どもたちのほとんどが「楽しかった!!」という感想でした。その他「勉強になった」「正直、他のプログラミング教材はあんまりだけどRootは楽しい」「プログラミングの必要な知識が身についた」「面白かった!」など、前向きな感想が多かったです。
「次の時間もRootをするよ」と声かけすると「やった~!」、逆に「もう終わりだよ」と言うと「え~、もうちょっとやりたかった…」という反応で、喜んでいたというのが率直な感想です。
教師の視点から見ても、今回Rootを活用できたことを本当にありがたく思っています。Rootを前にした子どもたちの目の輝きが違いました。やはり、画面上で動かす教材よりも、実際のロボットが動くのは、子どもたちの「プログラミングをした」という実感を得ることができると思います。
また、試行錯誤の場面をたくさん見られたことがとても良かったです。うまくいかないことだらけで、ある女の子はその場で立ち上がり自分の体を右、左に向けながら「なんで右?左?」「こっちか~!」と考えていて、あの姿がもう「学びだなぁ」と感じました。
失敗する体験がたくさんできて、自分で解決方法を探っていくというのが、すごく良かったです。
そういった点で、Rootをお借りできて良かったと感じています。
機器構成
- 組織名
- 熊本県美里町立砥用小学校 様
- 住所
- 〒861-4721 熊本県下益城郡美里町土喰330